皆さん、こんばんわ。看護師として20年以上、医療現場のスタッフとして働いてきました。現在は管理職として、医療の質の向上と後進の育成に力を注いでいます。
長いキャリアの中で、私が特に心を痛めている問題があります。それは、若い世代、特に20代後半を中心とした方々の間で、経済的な困難とそれに起因する生活習慣病のリスクが静かに、しかし確実に高まっているという現状です。
「若いうちは病気なんてしない」「なんとかなる」そう思っていませんか? 私もそう思っていた時期がありましたが、現場の現実を見るにつけ、その考えは改められました。経済的な不安が、知らず知らずのうちに心と体に大きな負担をかけ、将来の健康を蝕む種を蒔いているのです。
今日は、私の実体験を交えながら、この深刻な問題について皆さんと一緒に考え、将来への備えについてお話ししたいと思います。
私が現場で見た「貧困と健康問題のつながり」
医療現場では、様々な背景を持つ患者さんと日々向き合います。その中で、ここ数年特に増えていると感じるのが、以下のようなケースです。
- 経済的な理由で受診をためらう若者: 「病院代がない」「薬代が出せない」と、症状が悪化してからやっと来院されるケース。
- 栄養バランスの偏りから体調を崩す: 安価な加工食品やインスタント食品に偏り、必要な栄養が摂れずに疲れやすい、肌荒れがひどい、便秘など不調を訴える。若年層の糖尿病リスクの増加。
- 長時間労働や非正規雇用によるストレスと疲労: 不安定な収入や過酷な労働環境による心身の疲弊が、体調不良や精神的な問題を招く。
- 知識不足による不健康な生活習慣: 健康に関する正しい情報にアクセスできていない、あるいは情報があっても経済的な制約から実践できない。
これらの背景には、現代の若年層が置かれている経済状況が大きく影響しています。
今どきの若年層(25±3歳)のリアルな経済状況
ここで、私が情報収集したり、若いスタッフや患者さんから聞いたりする範囲での、20代半ば(22歳〜28歳あたり)の経済状況の一例を図式化してみましょう。
若年層(25歳±3歳)の経済状況イメージ
- 平均総収入(年収):
- 大卒・正社員で約300万円〜360万円程度(月収換算 25万円〜30万円)
- 非正規雇用の場合、これより大幅に低いケースも多数
- 総収入から社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)、所得税、住民税などが差し引かれます。
- 手取り目安: 約18万円〜24万円程度(時間外勤務・夜勤回数で変動する)
- 家賃(特に都市部):手取りの3〜4割を占めることも
- 食費:安く済ませがちだが、外食やコンビニ利用が多いと高額に
- 水道光熱費、通信費
- 奨学金返済:大きな負担となっている人が増加
- 交際費、趣味娯楽費
- 交通費
- 正社員でも給与が伸び悩む傾向(年間の昇給が5,000円程度、地域や契約によって変動)
- 非正規雇用の増加と雇用の不安定さ
- 将来への貯蓄や投資に回す余裕がない人が多い
- 消費の二極化(安価なものを選ぶ vs. こだわりのものにお金をかける)
この手取り額を見て、どう感じますか?ここから家賃や生活費を差し引くと、手元に残るお金がいかに少ないかが見えてきます。この経済的な余裕のなさが、健康的な生活を送る上でのハードルになっているのです。
ベテラン看護師からの教育的アプローチ
こうした状況を踏まえ、私が現場や研修などで若い方々に伝えている教育のポイントは以下の通りです。
- 健康への「投資」という考え方を持つことの重要性
- 若いうちの健康は将来への最大の財産であると認識してもらう。
- 目先の節約が将来の医療費増大につながるリスクを説明する。
- 食生活の工夫
- 安価でも栄養バランスの取れた食事の選び方(例:旬の野菜を取り入れる、乾物や冷凍食品を賢く使う、自炊の勧め)。
- コンビニ食や外食に頼りすぎないコツ、特にサプリメントやプロテインなど。
- 「まごわやさしい(豆、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけ、いも)」の基本を伝える。
- お金をかけずにできる運動習慣(自分はウォーキングを勧めている)
- エスカレーターを使わず階段を使う、一駅分歩く、自宅でできる筋トレやストレッチなど、日常生活で体を動かす習慣を促す。
- 自治体の無料または安価な運動施設やプログラムの情報提供。
- ストレスマネジメントの重要性
- 経済的な不安や仕事の悩みなどがストレスとなり、心身の不調につながることを理解してもらう。
- 自分に合ったリラックス方法を見つけるサポート(音楽、入浴、軽い運動、休息など)。
- 悩みを一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することの勧め。メンターがいると心強い。
- 医療・福祉制度の活用
- 会社の健康診断は必ず受けること。
- 体調が優れない時は、早めに医療機関を受診すること(悪化してからの方が治療期間も費用もかかることを説明)。
- 高額療養費制度など、医療費負担を軽減する制度があることを伝える。
- 自治体の保健センターなどで受けられる無料の健康相談や栄養相談の活用を勧める。
- 「予防」こそ最大の医療であるという意識
- 病気になってから治すより、病気にならないように日頃から気をつけることの重要性を繰り返し伝える。
このままではどうなる?そして、未来への一歩
現在の経済状況が続けば、多くの若者が健康を損ない、生活習慣病が低年齢化するリスクは高まります。これは個人の問題にとどまらず、医療費の増大、労働力不足、社会全体の活力低下といった、日本社会全体の未来に関わる深刻な問題です。
しかし、悲観してばかりはいられません。未来は、今日の行動で変えることができます。
たとえ手取りが少なくても、できることから少しずつ始めることが大切です。例えば、出勤・退勤時にウォーキングをする、週に一度は自炊する、寝る前に5分だけストレッチをする、休日は公園を散歩してみるなど、小さな一歩でも継続すれば大きな変化につながります。
そして何より、健康は将来の収入や生活の質に直結する「資本」であるという意識を持ってほしいのです。
私たち医療従事者はもちろん、行政や企業、そして社会全体で、若者が経済的な不安なく、健康的な生活を送れるようなサポート体制を構築していく必要があります。同時に、若い皆さん自身が「自分の体と心は自分で守る」という意識を持ち、正しい知識を得て、日々の生活習慣を見直していくことが、明るい未来を切り拓く鍵となります。
まとめ
若年層の貧困問題と生活習慣病リスクは、決して他人事ではありません。
- 現代の若者は経済的に厳しい状況に置かれていることが多い。
- 経済的な余裕のなさが、健康的な生活を送る上での障壁となっている。
- 食生活の偏り、運動不足、ストレスなどが、将来の病気のリスクを高めている。
- 健康は将来への大切な「投資」であるという意識が重要。
- 小さな習慣の改善や制度の活用で、健康リスクは減らせる。
- 個人、社会全体での意識改革と支援が必要。
私の20年以上の経験から言えるのは、健康は何ものにも代えがたい宝だということです。今からでも遅くはありません。ご自身の心と体に耳を傾け、できることから始めてみませんか?
この記事が、皆さんがご自身の健康と将来について考えるきっかけとなれば幸いです
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